おやゆびひめ

Original
原作者
Arche Sechsbaum
絵師
つちやりさ
声優
映像監督
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    むかしむかし、子どものいないおんなが、めがみさまにおいのりしました。「かわいい女の子をください」すると、めがみさまは女の人に一つぶの麦の種をあたえました。
  • さっそく女の人がそのタネをまくと、うつくしい つぼみがなりました。女の人が思わずキスをすると、つぼみの中から小さな女の子が生まれました。「はじめまして。あなたの名前はおやゆびひめよ」
  • 女の人は おやゆびひめを、それはそれは大切にそだてました。おやゆびひめのお気に入りは、おさら の プールに花びらのボートをうかべ あそぶこと。そしてあまい きれいな声で歌うのでした。その すがた は なんと あいらしい ことだったでしょう。
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    ある ばん、おやゆびひめが クルミのベッドで ねむっていますと、1ぴきのヒキガエルがピョンと へやの中へ とびこんできました。「おや、これはまあ、うちの むすこに ちょうどいい およめさん じゃないか」そして、ヒキガエルは おやゆびひめを つれさってしまいました。
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    「今日から お前さんは、あたしの せがれの およめさん だよ。そして この ぬま が、新しい家さ。いいところ だろ。まあ、なかよくやってくださいな」そう言いのこし、ヒキガエルは いってしまいました。
  • ハスのはっぱに 一人 のこされた おやゆびひめは、なき出してしまいます。「ヒキガエルの およめさん なんて、いや。ドロのぬま も きらいだわ」
  • そこへ メダカたちがおよいできました。「かわいそう!あのヒキガエルのおよめさん だって」「にがして やろうよ」そして、メダカたちは ハスの くき をかみ切ってくれました。「ありがとう」 おやゆびひめ を のせた ハスのはっぱは、遠くへながれてゆきました。
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    はっぱ は おやゆびひめ をのせ、どんどんながれてゆきました。すると、そこへ きれいな モンシロチョウが とんできました。そこで、おやゆびひめは モンシロチョウに おねがいして、はっぱを 引っぱって もらいました。あたりの ながめ は すばらしく、とてもしあわせでした。
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    ちょうど そのとき、いっぴきの コガネムシが とんできました。「おや、めずらしい虫がいるぞ」コガネムシは おやゆびひめ を つかんで、森の おく へ とんでいき、木の上に おやゆびひめ を おろしました。おやゆびひめ は、あの なかよしだった白いチョウを思い、かなしくなりました。
  • 木の上にいたコガネムシたちは、おやゆびひめを見るなり よってたかって けなしました。「あんたはコガネムシと にても につかないね」「足が たった 二本だよ」「まるで人間みたい、かっこわるい」そしてコガネムシたちは、おやゆびひめ を おきざり にして、どこかへ行ってしまいました。
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    おやゆびひめ は 夏じゅう、森の中で たった一人 くらしました。花のミツを 食べ、草にたまる つゆを のみ、草で あんだベッドで ねむります。やがて、夏がすぎ、秋もすぎ、つめたい冬が やってきました。「なんてさむいのかしら」とぼとぼ 歩いていると、野ネズミの家が ありました。
  • 「ごめんください。2日も何も食べていないのです。何か食べものを おめぐみ ください」「まあ、かわいそうに。中に おあがり。外は さむい から いつまでも いるといいよ」親切な野ネズミのおばさんは言いました。こうして おやゆびひめ は、野ネズミのおばさんとくらすことになりました。
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    野ネズミの家の下には、お金もちのモグラが すんでいました。「なんてかわいい子だろう」おやゆびひめ を 気に入ったモグラは 毎日あそびにきます。でも、おやゆびひめ は、モグラのことが すきではありませんでした。なぜなら、モグラは、お日さまも お花も 鳥も 大きらい だからです。
  • ある日のこと、おやゆびひめ は、ケガをし、たおれているツバメを 地下の トンネルで 見つけました。でも、モグラと 野ネズミは まったく気にもとめません。やさしい おやゆびひめ は 一人で 毎日せわをしました。「どうか元気になって、もういちど歌って。わたし、あなたの歌が 大すきよ」
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    春には、ツバメも すっかり元気になりました。「あなたの おかげで、とべるように なりました。さあ、いっしょに南の国へ行きましょう。お花がいっぱいで、すてきな ところですよ」「ありがとう。でも行けないわ」おやゆびひめ は、野ネズミを のこしてゆくのが 気のどく だったのです。
  • 「さようなら。かわいい ちっちゃな おじょうちゃん」ツバメは そういうと、太ようの 光の中に まい上がりました。とびさる ツバメを 見上げる おやゆびひめ の 目には、なみだが光ります。
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    夏が くると、野ネズミが言いました。「よかったねえ、おやゆびひめ。なんと、あのお金もちの モグラさんが、あなたを およめさんに ほしいんですって」おやゆびひめ は びっくり。モグラと けっこんしたら、じめんの おくそこ で くらさなければなりません。
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    秋になり、けっこんしき の 日が やってきました。おやゆびひめ は 野原で 言いました。「さようなら、お日さま。さようなら、お花さん。わたしは じめんの そこ に行くの。一生あなたたち には 会えないわ。ツバメさんによろしくね」 おやゆびひめ は、かなしんで空を見上げます。
  • すると、聞きおぼえのある声が聞こえてきました。「おやゆびひめ、あなたを むかえに きましたよ」あの時たすけたツバメが、とんで来たのです。「聞きましたよ、モグラがあなたをおよめさんにしたがっていると。さあ、こんどこそ南の国へ行きましょう」
  • 「いいわ。あなたといっしょにいく」おやゆびひめに、もう まよいは ありません。おやゆびひめ は、ツバメの せなか に のりました。
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    ツバメは 空高くまい上がり、森を こえ、みずうみを こえ、雪ふりつもる山を こえ、とんでゆきました。そして、あたたかな南の国、明るい光のみちみちた ゆたかな国に やってきました。ゆけばゆくほど、見わたす けしきはすばらしいものになりました。
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    おやゆびひめ がやってきたのは、花の国。ツバメは まわりの 花たち より、とりわけ うつくしい 百合の花の上に、おやゆびひめ を おろしました。
  • その花の上には、おやゆびひめと同じくらいの大きさの男の子が立っていました。「ようこそ、かわいいむすめさん」この男の子は、花の国の王子さまでした。
  • 王子さまは、どの花の ようせい よりも あいらしい、おやゆびひめの とりこ になりました。それから おやゆびひめは、花の国の王子とけっこんしました。「さあ、これをどうぞ」王子さまは、おやゆびひめ の せなかに 羽をつけ、かんむり を かぶせてくれました。
  • 花から花へと とび回り、おやゆびひめは、ツバメと いっしょに うつくしい声で歌います。しかし、ツバメは ちょっぴり かなしい気分でした。おやゆびひめが 大すきでしたから、わかれたくなかったのです。でも、ツバメは デンマークに 帰らなければなりません。「さようなら、おやゆびひめ」
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    デンマークにある ツバメの家の そば には、おとぎ話を書く おじさん が すんでいました。ツバメは、このおじさんに「聞いて、聞いて、こんなことが あったんだ」と聞かせました。だから今、この話は こうして のこっているのです。