おかえり、サマンサ

Original
原作者
Arche Sechsbaum
絵師
Aomu
声優
映像監督
  • 512

    ある おとぎの国の お話です。ある きぞくの家に、サマンサ という 一人むすめが おりました。チューリップ のように うつくしい サマンサの むねには、なくなった父親から 20才の たんじょう日に もらった ペンダントが、かがやいています。
  • サマンサは 今年で29才。女ともだちは もう みんな けっこん しています。母親は、早く けっこん してほしいのですが、サマンサには その気は ありません。「みんな 弱い男ばっかり。わたしを つれさってしまう ような、いさましい 男の人がいいの。」母親は しんぱいで たまりません。
  • 512

    そんな ある日、げんかんの チャイムが 鳴りました。サマンサが 出ようと 近づくと、とつぜん ドアが ひらき、長い した が とびこんできました。「あっ!」サマンサの 体は、その した によって、とらわれてしまいました。
  • その したの ぬしは、ヒキガエルの ニートンです。サマンサとは おさななじみ ですが、さいきんは すっかり ひきこもって、すがたを 見せていませんでした。「やめて!はなして!」ニートンは サマンサの 言うことを 聞かず、サマンサを つれて 森の ほうへ とびはねていきました。
  • 512

    しばらくして ニートンは、森の中の 広場にたどりつきました。「いいかげんに はなして!」さけぶ サマンサを はなさないまま、ニートンは 言いました。「おれと けっこんしてくれ」「あなたとは けっこんしない。わたしのタイプは、お金もちでたよりがいのある、大人の男の人よ」
  • 512

    何時間 たったのでしょう。つかれはてた ニートンと サマンサは、その場で ねむりこけて しましました。そこへ やってきたのは、モグラの グラーはくしゃく です。「おじょうさん、どうされました?」その いげんのある 大人の声に、サマンサは 目を さましました。
  • 「ごらんの とおり、とらわれの み に なっているのです」「それはいかん」そう言うと、はくしゃくは サマンサを とらえたまま ねている ニートンを つえで おこそうとしますが、いっこうに おきようとしません。
  • 512

    しかたがない と、グラーはくしゃく が つえを 大きく ふりおろしました。すると どうでしょう。 ニートンの 長いしたが、サマンサの てまえで みごとに スパッと 切れたのです。「いだ~い」
  • はくしゃくは ほほえみながら、サマンサに 話しかけました。「もう だいじょうぶだ。からだも ひえた だろう。わたしの やしきで あたたまると いい」ふたりは くろぬりの ばしゃに のりこむと、なきさけぶ ニートンを おきざり にして 行ってしまいました。
  • 512

    サマンサが グラーはくしゃく の やしきに来てから、数日が すぎました。そこには、おいしい しょくじ、あたたかいベッド、そして うつくしいドレスがありました。はくしゃく も サマンサに やさしくしてくれます。サマンサは、やしきの生活が 気にいっていました。
  • しかし、はくしゃく は サマンサにとって、きたない 中年の モグラでしかなく、きらい でした。何日か たつと、はくしゃく は サマンサに けっこんを もうしこみました。「ごめんなさい。わかい 男の人が いいの」「わかったよ。でも、その男が あらわれるまで、ここに いてくれないか」
  • 512

    その夜、サマンサは 地下への かいだんを おりていきました。いざとなったら、にげ出す出口を さがしておきたかったのです。たどりついた地下のへやには、つばさに けがをしたツバメが、古びたベッドに よこたわっていました。
  • そのツバメの名前は スワティと いいました。グラーはくしゃく の しようにんに、とらえられていたのです。「はくしゃく は、あなたを どうするつもりなの」サマンサは聞きました。
  • 「わたしが しぬまで まって、食べるのでしょう」スワティの ことばに サマンサは ショックを うけます。このままでは、スワティは 食べられてしまいます。なんとかしてあげたいと、サマンサは まいばん、地下にやってきて、スワティをかんびょうするようになりました。
  • 512

    ある朝、サマンサが おきると、へやに ごうかなウェディングドレスが かざってあるではないですか。サマンサは、ここから いっこくもはやく 出ていかなくてはいけないと 思いました。その時です、まどから スワティが 入ってきました。
  • 「サマンサの おかげで すっかり 元気に なりました。こんどは わたしが、あなたの のぞみを かなえる ばん です」とスワティ。「わかくて、お金もちの 男の人。そう、王子さまと けっこん したい」サマンサが 答えると、スワティは つばさを 広げました。「せなかに のってください」
  • 512

    スワティは サマンサを せなかに のせると、大空 たかく とびあがりました。さわやかな 風を うけながら、サマンサは きたいに むねを ふくらませます。
  • 512

    半日ほど とびつづけた スワティは、大きな おしろの ベランダに サマンサを おろしました。そこには ゆめで 見たような 王子さまが 立っていました。
  • 「ようこそ、うつくしいおじょうさん」王子さまは 言いました。これまで 聞いたことも ない うつくしい声と、その りりしいみのこなしに、サマンサは あっという間に こいにおちました。
  • 「王子さま。わたしを おきさき に していただけませんか?」「もちろんです」王子さまは そう言うと、サマンサの 手をとり、やさしい 口づけを しました。すると、サマンサの ペンダントが 光り かがやきました。「おなまえは?」「わたしの なまえは サマンサ。」
  • 512

    王子さまと ごうかな けっこんしきを あげ、ゆうがな くらしを はじめた サマンサ。はじめは おとなしく していましたが、いつしか わがまま ばかり 言うように なりました。一年たった ある日のことです。王子さまは、サマンサの へやに あらわれて、わかれを つげたのです。
  • 「サマンサ。きみは、しょうらいの おうひに ふさわしくない」「なぜですか、王子さま」「きみは 自分がうつくしいのを いいことに、自分を あまやかし、人の心を きずつけるから だ」その日、おしろを 出ていくことになった サマンサ。むねのペンダントも、かがやきを うしないました。
  • 512

    家に帰る とちゅうで お金がなくなったサマンサは、いなか町の レストランで、すみこみ で はたらくことにしました。はじめて自分で お金をかせぐことに なったのです。てんしゅに 言われたことを よく聞き、いっしょうけんめい はたらきました。
  • サマンサの ひたむきな すがたは、じょうれんきゃく の ひょうばんに なるほど でした。多くの 男の人が サマンサを デートに さそおうと しましたが、サマンサは それを ことわりつづけました。
  • 512

    お金が たまり、レストランを やめた サマンサは、何日も 歩き、やっとのことで 家に 帰りつきました。家で まっていた 母親は、よろこびの 声を あげました。「サマンサ!」「お母さん!わがまま 言って ごめんね」二人は しっかりと、だきあいました。
  • 家を出てから、およそ2年が たっていました。31才になった サマンサの顔は、べつじん のように じしんに みちていました。ペンダントは なくしてしまいましたが、サマンサのえがおは ペンダントとは くらべられないほど、かがやいていました。