忘れられたティンカー・ベル

ピーター・パンの永遠の相棒といえばティンカー・ベル……というわけでもないみたいです。

(ちぎれた影を縫いつけてあげるウェンディとヤキモチを焼くティンカー・ベル:梅木夕夏・画「ピーター・パン」

ピーター・パンに思いを寄せるティンカー・ベル

ピーター・パンといえば、いつも一緒にいる小さな妖精ティンカーベルが思い浮かびますよね。

とくに、ティンカー・ベルはピーター・パンのことが好きなので、ピーターと仲良くするウェンディにヤキモチを焼いて、ウェンディを恐ろしい目に合わせようとしてしまいます。

(恐ろしい目に合うウェンディの図:梅木夕夏・画「ピーター・パン」

でも、ピーターのほうはけっこう薄情なんです……。

「ティンカー・ベルって誰さ?」

(大人になったウェンディ:梅木夕夏・画「ピーター・パン」

次の引用は、原作小説『ピーター・パンとウェンディ』の最終章で、ピーターが1年後にウェンディと再会したときのことです。

ティンカー・ベルはわたしと会って喜んでくれるかしら、とウェンディが自信なさそうに言うと、ピーターは「ティンカー・ベルって誰さ?」と言いました。

「まあ、ピーター」ウェンディはショックを受けて言いました。ウェンディが説明してやっても、ピーターは思い出せませんでした。

「妖精はたくさんいるものでね」ピーターは言いました。「その妖精はもう死んだんじゃないかな」(大久保寛訳『ピーター・パンとウェンディ』新潮文庫、297~298ページ)

なんと、ピーター・パンはティンカー・ベルのことをすっかり忘れてしまっていたのです。しかも、ウェンディがいくら説明しても少しも思い出しません。

そして、ティンカー・ベルは単に忘れられただけでなく、もう死んでしまっているようです。


私〔=ナレーター〕はピーターの言ったとおりだと思います。妖精は長生きできないからです。ただ、とても小さいので、人間には短く思えても、妖精にはかなり長く思えるのです。(大久保寛訳『ピーター・パンとウェンディ』新潮文庫、298ページ)

ただでさえ物忘れの激しいピーター・パンのことですから、死んでしまった妖精のことなんて、覚えていられないのでしょう……。

それにしても、あんなにピーターのことを慕っていたティンカー・ベルのことを忘れてしまうなんて、さすがにひどすぎですね。



ストーリー

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ここは、イギリスで 一番大きな まち ロンドン です。たくさんの 家が ならんでいます。そのなかの ひとつを のぞいてみると、子どもたちが ねむっています。一番年上のお姉さんが ウェンディ、まんなかの 男の子が ジョン、一番下の弟が マイケル です。
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とある みなと町に、ぼうしや が ありました。ここ の 親方 は、すぐれた しょくにん でしたが、きびしい人でした。「何を やってんだ、ピーター!フックだ!」